日なたの窓に憧れて

メンタルが弱い

何もない朝に君をみつけたい

  夏休みになってから、バイト以外でほぼ外に出ていない。Googleカレンダーにはきつきつに予定が詰まっているというのに。バイト以外の予定は、体調が悪いという誰もなにも言えないけどいちじるしく信頼を失う理由ですべてキャンセルし尽くした。真っ暗で汚くてせまっくるしい部屋で、眠るか、TRICKを観るか、薬を飲んでいろいろな言葉を反芻しながら泣いている。

なんにも望まないなんて嘘だ。 私は望みすぎて爆発しそうになっている。ちいさいころに、欲しいものは欲しいって言っておけばよかった。やりたいことをやっておけばよかった。わがままを言えばよかった。自分の好きなようにすればよかった。だって、今さら手に入らないものを欲しがって暴れだすなんてできないじゃない。 今さら手に入った本当はいらないはずのものを振り切って欲しいものに手を伸ばすことなんてできないじゃない。

  どこかに、「大人なんて生き物はいない」と書いてあったのを思い出した。私は物心ついたときからずっと、大人になりたかった。はやく大人になりたい、それだけを考えていた。 お父さんとお母さんがお金のことで怒鳴り合うのを聞きながら、クラスの中心の男子女子からの馬鹿にするような視線に耐えながら。 大人になって、お金が稼げるようになって、誰も傷つけない 自分の大事なものを全部護れる大人になる。 こんなふうに 私の考えることなんにも分からないような、くだらない人間のいるところからはやく抜けだしたい。 ずっとそう思っていた。 大人だね、賢いね そう言われるのがずっと誇らしかった。 でも、同時にそんなのは自分じゃないということもわかってた。
  子どもの頃の私はこんなに泣き虫じゃなかった。 もっと強かった。 こんなことでへこたれなかった。 いつか、こんな檻を抜けだして私は大事なものをぜんぶ守れるような強い大人になれるんだと 信じていた。
 中学校を卒業しても、高校を卒業しても、成人しても、いつか はやってこなかった。 私は何ひとつ守れないし、大事なものを傷つけまくるし、本当に欲しいものは絶対に手に入らないし、強くもない。くだらないのは私自身で、大事なものはなんだかわからなくなってしまって、全部意味が無いのだと気づいてしまって、ずっこけて、ころころころころ転がって、私は坂道を転がり落ちつつ、大事なものも、とりあえず手に入れたものも、何もかも手放そうとしている。
  本当は、わがままで、大事にしたいんじゃなくて大事にされたいだけで、愛されたくて、特別にされたくて、自分が意味のある存在だと思いたくて、怠惰で、くだらない人間で、でもそれを見せてしまったら誰にも相手にされないから、とりあえず繕って大人で賢くて誰とでも仲良くできるひとを演じている。

 

大人なんて生き物はいない。
でも、みんないつかは大人になる。

 

  いちばん大切なことは、目には見えない。大人は目に見えることばかり大切にする。でも、大人が目に見えることを大切にするのは、子どもが目に見えないことに安心して集中できるようにするためなんだよ。大人が目に見えないことにばかり気を取られていたら、子どもは安心して暮らせないんだ。だからね、大人は悲しい生き物なんだよ。

私は これから 悲しい生き物にならなくちゃいけないのかなあ。